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劣化機構と補修・設計の注意点
  • 水掛りによる劣化機構
  • ◎  コンクリートを固めているセメントペーストの主成分は水酸化カルシュウム(Ca(OH)2)である、水に触れることでCa(OH)2は溶脱する。
  • ◎  CO2(炭酸化)による中性化は強度低下を伴わないが、Ca(OH)2の溶脱によるPH値低下は、強度低下、コンクリート品質の低下を伴う。
  • ◎  ペースト内に存在する細孔空隙に水が浸透し凍害が生じる。
  • ◎  水分の移動は浸透、拡散、毛管現象により起こるが、もう一つの移動手段として、コンクリート表面に付着した水は、細孔空隙内の空気が気温の低下に伴って収縮するとき、負圧で吸収されるように取り込まれる。
  • ◎  塩は塩水・海水として水に溶け、イオン化した状態で、上記の作用によって取り込まれる。化学物質についても同様なことが言える。
  • ◎  水掛りが中性化、塩害、凍害、ASR、鋼材腐食の劣化進行を助長する。
  • 劣化現象の原因と補修
  • 1.断面の浮き剥離 ――― 凍害、塩害、鉄筋腐食、化学物質
    • 凍害:劣化部を撤去した後、露出鋼材があれば、その防錆処理を行い、その後に断面修復し水掛り対策を施す。
    • 化学物質:排気ガス、タイヤ磨耗カス、酸性雨、界面活性剤など対応困難な化学物質との接触防止にも水掛り対策が有効。
    • (水掛り対策:表面被覆、シラン系含浸被覆材塗布)
    • 断面欠損 ――― 衝突:補修工法は浮き剥離に同じ
  • 2.鉄筋腐食 ――― かぶり不足、断面欠損、塩害、中性化
    • かぶり不足:鋼材の防錆処理、断面修復後に防水処理を施す。
    • (防水処理:断面修復してもかぶり厚(実かぶり3cm)が確保されない場合、補修面からの水の供給を断つ対策を施す。コンクリート・鉄筋の温度特性に追従する表面被覆、シラン系含浸被覆材塗布=温度特性には追従しない・内部結露)
  • 3.ひび割れ ――― 施工不良、乾燥収縮、凍害、塩害、鉄筋腐食、応力
    • 施工不良、乾燥収縮:ひび割れ規模が小さい時は補修対象としない。ただし、漏水があるときは、止水(水掛り防止、補修の確実化を目的として)を他の補修に最優先で処理する。(遊離石灰の溶出も漏水とみなし、同様に考慮する)
    • 凍害ほかその他:損傷進行の有無を経過観察することが大切。
    • 錆汁析出があるときは防錆剤の注入後、ひび割れ幅を考慮し注入・充填・プレパック工法を施し、ひび割れからの水の浸入を阻止する。
    • ひび割れが広範囲に多数生じている場合は防水被覆で対処する。
    • (防水被覆:ひび割れ補修、断面修復で補修困難なひび割れに珪酸塩系の表面含浸材によるコンクリート改質、表面被覆、シラン系含浸被覆材による防水対策)
  • 4.中性化 ――― CO2の侵入、Ca(OH)2消失
    • 軽微なひび割れ、被り不足(中性化残り3cm以下)の場合は被覆対策を施す。
    • (被覆対策:鉄筋腐食防水処理に同じ、表面被覆、シラン系含浸被覆材塗布)
    • 水掛りによりCa(OH)2の溶脱によって中性化した場合は、必要箇所の断面修復後、水掛り対策を施す。
  • 5.塩害 ――― 発錆、爆裂、断面欠損
    • 鋼材位置における塩化物イオン濃度が発錆限界値1.2Kg以上/m3の場合は、水分供給の有無を確認の上で、先記1.の断面欠損と同じ対策を施す。
  • 6.漏水 ――― ひび割れ、その他
    • 漏水の発生源を絶つ。不明の場合には止水注入工の実施。
    • 水掛り対策は徹底して行う。
  • 補修設計の注意点
  • 1.中性化していても全てを補修の対象とする必要はない。(強度に影響がない。ひび割れ・被り厚・水掛りに問題がない場合。)
  • 2.鉄筋位置における塩分濃度1.2Kg/m3以上でも全てを補修の対象とする必要はない。
    • 塩分濃度が1.2Kg/m3を超えても、ひび割れが生じておらず、被りが確保されていれば、水は供給されず塩害(鉄筋発錆爆裂)は生じない。
    • (被り厚が確保され・水掛かり・ひび割れがない場合)
  • 3.漏水(遊離石灰溶出部も漏水と看做す)は確実な止水を施す。(漏水を放置したままの補修は、早期に再劣化が生じる。)
  • 4.水掛かり対策とは、コンクリートに直接水を触れさせないこと。
    • (表面被覆材は水を通さないで透気・透湿性があること。さらにひび割れに伸展性を考慮する場合はひび割れ追従性を確保すること)
    • ※表面被覆材の透気・透湿性確保の重要性は、背面結露による凍害を防止するため。(寒冷地では必須)
    • (シラン系表面含浸被覆材が有効である、但し材質、内部結露、施工に注意を要するものがある。また有効期限は短いものもある。)
  • 5.注入にセメント系材料を用いる時は、水和反応を十分に確保できる工法を選択する。(単なる注入だけでは目的を達成していない。) 
  • 6.断面修復にはプライマーを含めて基材との一体性を確保すること。
  • (多くのプライマーは界面から浸透する水に触れることで加水分解し付着力を失う。また、プライマーの目的は補修材のドライアウト防止であることに注意する。)
  • 7.コンクリートに水掛り、ひび割れ、鉄筋腐食がなければ、美観上の対策だけで、予防保全対策は必要としない。
  • 8.表面含浸材は中性化は若干しか抑制しない。(コンクリートライブラリー137)
2018.1.18
コンクリート・鋼構造物超耐久化工法研究会