コンクリートに水が触れると何が起きる
- コンクリートを固めているセメントペーストは水に触れることで溶脱する
- 1.雨が直接当たる部位ではペーストが少しずつ溶解し、細骨材が露出し次に粗骨材が露出する。
- 2.ひび割れから漏水している部位では、ひび割れの中を水が移動する際にペーストを溶脱し水に含まれた水酸化カルシウムがCO2と反応して遊離石灰を析出する。
- 3.結露する部位では、水が蒸発した後には白く遊離石灰が残る。
- 4.用水路や養魚施設では水がコンクリート面を流れて、表面のペーストが溶脱し失われ細骨材や粗骨材が露出する。
- 5.雨水の集まって流れる下流側で、ペーストが溶脱し骨材が露出しさらに断面欠損が生じる。
- 塩は単独でコンクリートには浸透しない。
- 1.水に溶けて塩水や海水として浸透する。
- 2.ペーストは塩分を含む水と触れることで、水のみの場合より溶解は早まる。
- 3.上記の1〜5と同じことが塩水、海水に依っても生じる。
- 水や塩水、海水のコンクリートへの浸透
- 1.通常は引力によって細孔空隙から浸透する。
- 2.コンクリートに内在する空気(約18%)の作用を無視できない点を下記に示す。
- a.コンクリート構造物の殆どは気温変化の影響を受ける。
- b.空気は、10℃の気温変化で9〜14%膨張収縮を繰り返す。
- c.1ccの水は1200〜1700ccの水蒸気になる。
- *水や塩水、海水はコンクリートに表面に付着した後、気温が低下するとコンクリート内の空気が収縮し表面から水や塩水、海水がコンクリート内部に吸われるようにして取り込まれる。
- 凍害
- 1.コンクリート内に取り込まれた水は、気温がマイナスになると凍結し膨張して破壊する。
- 2.塩分を含んだ塩水や海水は凍結温度で低下する。
- マイナス気温下で温度が上昇すると融点を超えた塩水、海水は解け周りの真水の氷を溶かし塩分濃度が低下すると再び凍結する。
塩分を含んだ環境下では凍結融解の回数が増加し、コンクリートの劣化は早まる。
- 塩害
- 1.コンクリート表面に付着した塩水、海水は気温の変化に伴ってコンクリート内部に取り込まれ気温の上昇によって水分だけが蒸発しコンクリート内部には塩分だけが残る。
- 2.さらに、塩水、海水が取り込まれ繰返すことで塩分濃度は高くなり蓄積されて水だけの浸透によっても塩分は深部へと浸透する。
- 3.健全なコンクリートは塩分があってもフリーデル氏塩の保護を受け、水や酸素の影響を受けないので発錆も腐食も生じない。
- 4.ひび割れや水掛かりによってCO2の供給やCaOHの溶脱で中性化してPH値が低下するとフリーデル氏塩も消失し、鉄筋の発錆、腐食が進行する。
- 中性化
- 1.単なるCO2の供給だけでは中性化しても、強度には影響はない。
- 2.水や酸素が供給されない部は中性化しても対策は必要がない。
- 3.中性化したところに、ひび割れや、水掛かり、酸素が供給されると、これらの劣化要因が複合的に鉄筋に作用し加速的にコンクリートは破壊される。
- 被り不足
- 1.鉄とコンクリートの熱膨張率は同じでも、温度特性は異なるためにひび割れが生じる。
- 2.ひび割れが生じたところに、水や酸素が供給されると鉄筋は発錆、腐食しコンクリートの爆裂、断面欠損が生じる。
- ASR
- 水掛かりによってひび割れ等から水が供給されることで、アルカリ骨材の発症が始まる。
以上のことから
コンクリートの劣化は、凍害、塩害、中性化ありきではなく
コンクリートの劣化は、凍害、塩害、中性化ありきではなく
- 1.初期欠陥として、ひび割れ、被り不足、ASR
- 2.水掛かり
- 3.水掛かりによって、凍害、塩害、中性化、ASRが生じ
- 4.ひび割れ、断面欠損、鉄筋腐食へと進展する
- 水掛かりすなわち水の供給がなければ、コンクリートの劣化は限りなく低減することが解る。
- コンクリートに水が触れない対策が長寿命化、耐久化を可能にする。
- 但し、水に触れない対策として透気、透湿性のない表面被覆材・表面含浸被覆材を用いることで凍結融解を促進することに注意を要する。
2018.6.27
コンクリート・鋼構造物超耐久化工法研究会
コンクリート・鋼構造物超耐久化工法研究会